n8nとは?
このセクションでは、n8nがどのようなツールなのか、その中心的な概念を紹介します。n8nは「ノードベースのワークフロー自動化ツール」です。ZapierやIFTTTと似ていますが、より柔軟で高機能なことができます(特にセルフホスト版)。
プログラミングの知識が少しあるとより強力ですが、基本的なことであればノーコードでも十分に活用できます。このガイドを使って、自動化の第一歩を踏み出しましょう。
中心となる3つの概念
1. ワークフロー (Workflow)
自動化したい一連の作業全体のことを指します。「フォームが送信されたら、Slackに通知する」というのが1つのワークフローです。
2. ノード (Node)
ワークフローを構成する個々の「処理」や「ステップ」です。「HubSpotからデータを取得する」「Slackに投稿する」がそれぞれノードになります。
3. コネクション (Connection)
ノード間をつなぐ「線」です。データの流れ(どのノードからどのノードへデータが渡されるか)を示します。
n8n と Zapier の違い
Zapier (ザピアー)
- 🔹 誰でも簡単に使える「直線的」な自動化が得意。
- 🔹 SaaS (クラウド) のみ利用可能。
- 🔹 実行回数が増えるとコストが高くなりやすい。
n8n (エヌエイトエヌ)
- 🔸 複雑な分岐やループなど、自由度の高いフローが組める。
- 🔸 クラウドだけでなく、自社サーバー (無料) でも使える。
- 🔸 コストパフォーマンスが良い (特に大量処理時)。
| 比較項目 | Zapier | n8n |
|---|---|---|
| 視覚表現 | 縦長のリスト形式 | フローチャート形式 (見やすい) |
| 複雑な処理 | 苦手 (分岐などは有料/複雑) | 得意 (分岐、ループ、結合が自在) |
| 料金体系 | タスク課金 (ステップ数) | ワークフロー実行課金 (ステップ数は無制限) |
| セルフホスト | 不可 | 可能 (無料〜) |
アカウントプランの概要
n8nには、自分でサーバーにインストールする「セルフホスト版」と、n8nが提供する環境を使う「クラウド版」があります。機能や料金が異なるため、目的に合わせて選びます。
セルフホスト (Self-hosted)
- 料金: 基本無料 (Community版)
- 特徴: 自分のサーバーで動かす。ワークフロー数や実行回数に制限がない。
- 注意点: サーバーの構築・運用・保守(アップデートなど)を自分で行う必要がある。
クラウド (Cloud)
- 料金: 段階的な有料プラン (Starter, Pro,など)
- 特徴: サーバー管理が不要。すぐに使い始められる。
- 注意点: プランによってワークフローの実行回数や機能に制限がある。
※ 勉強会では、すぐに試せるクラウド版の無料枠(Freeプラン)か、ローカルPCで簡単に試せる`n8n-desktop`を使うのがおすすめです。
クラウド版 料金体系 (Cloud Pricing)
※ 2025年時点の概算です。最新情報は公式サイトをご確認ください。主な違いは「月間実行回数」です。
Starter
個人の自動化や小規模なタスク向け
- ✓ 実行回数: 2,500回 /月
- ✓ アクティブWF: 無制限
Pro
チームでの利用や業務自動化向け
- ✓ 実行回数: 10,000回 /月
- ✓ アクティブWF: 無制限
- ✓ APIアクセス & 共有機能
本格的な運用に
Enterprise
大規模な組織や高度なセキュリティが必要な場合
- ✓ 実行回数: 無制限〜
- ✓ SSO (シングルサインオン)
- ✓ 専任サポート
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トリガー (Trigger) の種類
ワークフローを開始する「きっかけ」となるノードのことです。すべてのワークフローは、必ず1つのトリガーノードから始まります。トリガーには、大きく分けて「自動実行」と「手動実行」の2つのパターンがあります。
自動実行トリガー
何かが起きた時、または決まった時間になった時に自動で実行されます。
Webhook (ウェブフック)
外部のアプリがn8nの特定URLにデータを送信した時。 (例: HubSpotのフォーム送信、Stripeの決済完了)
Schedule / Cron (スケジュール)
決まった時間に実行。 (例: 毎日朝9時、1時間ごと、毎月1日)
App Specific (アプリ固有)
特定のアプリのイベントを監視。 (例: Gmailに新しいメールが届いた時、Googleカレンダーに新しい予定が登録された時)
手動実行トリガー
開発者や運用者が自分で操作して実行します。
Manual / Start (手動)
n8nの編集画面で「Execute Workflow」ボタンを押した時。開発・テスト中によく使います。
Form Trigger (フォーム)
n8nが生成する簡易なフォームを送信した時。簡易的な手動実行ボタンとして使えます。
ノードの主な種類
トリガーで開始した後に使うノードは、大きく分けると「アクション(アプリ連携)」「フロー制御」「データ操作」の3つに分類できます。
1. アクション (Apps)
外部アプリと連携する
Slack, Notion, Google Sheetsなど、外部のサービスに対して「書く」「読む」「更新する」などの操作を行います。
- ✓ Slack: メッセージ送信
- ✓ Notion: ページ作成
2. フロー制御 (Flow)
流れを変える・繰り返す
データの流れを条件によって分岐させたり、ループさせたりする、プログラミング的な動きをするノードです。
- ❖ If: 条件分岐
- ❖ Loop: 繰り返し処理
3. データ操作 (Core)
データを加工・整形する
アプリ間のデータの「形式」を合わせたり、計算をしたり、APIを直接叩いたりするための重要なノードです。
- ✎ Edit Fields: 整理
- ✎ HTTP Request: 通信
これだけは覚えたい!頻出ノード Top 20
Edit Fields (Set)
データの選別・名前変更・値の追加。最も使います。
If
True/Falseの条件分岐。「価格が1000円以上なら」など。
HTTP Request
あらゆるAPIと通信可能。専用ノードがない時に使用。
Switch
3つ以上のルートへの分岐。「問い合わせ・注文・その他」など。
Split In Batches
繰り返し(ループ)処理。データを1件ずつ処理したい時に。
Merge
2つのルートのデータを結合したり、待ち合わせたりする。
Wait
指定時間待機。「メール送信後、1日待ってから確認」など。
Date & Time
日付のフォーマット変換や計算。「YYYY-MM-DD」形式になど。
Code
JavaScript/Pythonで複雑な処理を実行。上級者向け。
Spreadsheet File
ExcelやCSVファイルの読み込み・書き出し。
Slack
チャンネル通知、DM送信、ユーザー検索など。
Google Sheets
行の追加、読み取り、更新。簡易DBとしてよく使う。
Gmail
メールの送信、ラベル付け、未読メールの取得。
Notion
データベースアイテムの作成、ページの更新、検索。
OpenAI
ChatGPT連携。テキスト生成、要約、翻訳など。
HubSpot
コンタクト作成、ディール更新、会社情報の取得。
Airtable
リレーショナルデータベース操作。スプレッドシートより強力。
Webhook
(トリガー)外部からのデータ受信。自動化の入り口。
Schedule
(トリガー)定期的な自動実行。
Postgres
SQLクエリの実行。本格的なデータベース操作。
事前要望ユースケースの実現アイデア
いただいた事前要望をn8nでどう実現できるか、簡単なワークフローの例で示します。これらはあくまで一例ですが、n8nの強力な連携機能を感じられると思います。
1. HubSpotフォーム通知をAIで構造化してNotionに入れる
これはn8nとAIノード(OpenAIやGeminiなど)の組み合わせで非常に高度化できます。HubSpotからWebhookで生のテキストデータを受け取り、AIに「このテキストから会社名、担当者名、問い合わせ内容をJSON形式で抽出して」と指示します。その結果(構造化されたデータ)だけをNotionデータベースの各列にマッピングします。
2. NotionからTableauにデータを入れて分析
可能です。n8nにはTableauノードがあります。「Schedule」トリガーで定期的に(例: 1時間ごと)Notionデータベースからデータを取得し、Tableauのデータソースを更新・上書きするワークフローを組むことができます。
3. Google ChromeアプリのDLデータをNotionに自動連携
Google Chromeウェブストアが統計情報を取得するAPIを提供している場合、n8nで実現できます。「Schedule」トリガーで毎日実行し、「HTTP Request」ノードでそのAPIを叩いてダウンロード数を取得し、Notionデータベースに日付と共に記録します。
4. 複数プラットフォーム (Chrome, Notion, Miro) の統合分析
n8nの強力なユースケースです。n8nの役割は「データの集約」です。複数のワークフローを使い、各プラットフォーム(Chrome API, Miro APIなど)からデータを取得し、すべてを「分析用の単一のマスターデータベース」(例: Notionの特定DBやGoogle BigQueryなど)に集約します。Tableauはそのマスターデータベースを参照することで、統合分析が可能になります。
5. LimitlessのデータをNotionレコードに日時で貯める
これもAPI次第です。LimitlessがWebhookをサポートしていれば、リアルタイムでデータをNotionに送信できます。もしWebhookがなくても、APIがあるなら「Schedule」トリガーで定期的に(例: 15分ごと)新しいデータをポーリング(確認)しに行き、新しいデータがあればNotionに日時と共に記録します。